#284 告白―読んだもの(16)

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湊かなえ著「告白
第1章の「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞し、本書がデビュー作となっている。第2章「殉教者」から第6章「伝道者」までは、その後で書き足されたものだ。

ミステリーに分類されるのだろうけど、今の社会で起きている事件はこういう心理が背景にあるのかもしれない、と考えさせられる作品。それ以前にストーリも面白い。

人の考えていることは他人には本当によく分からなくて、誰かの行動を見て「こういうことを考えているんだろうななぁ」と思ってみても、全く違うかもしれないし、人のために何かをするというのも難しくて、「こうしたらあの人のためになる」と思って何かをしてみても、全く違う結果になるかもしれない。この作品を読んで、そんな思いを改めて感じた。

第1章「聖職者」から第6章の「伝道者」は、ある期間に起きた出来事を別々の登場人物の観点から描かれている。第1章「聖職者」は、中学1年の担任である森口裕子が終業式の日に生徒たちに語りかけた言葉として書かれている。彼女は、一人娘を事故で失うが、それは事故ではなく、彼女の二人の生徒に殺されたものだった。しかし、彼女は彼ら警察へつきだすという形ではなく、ホームルームで事件の真相を語ること、それともう一つ別の手段で復讐しようとした。

第2章から第5章まで違った登場人物の観点でこの事件が語られ物語が進んでいくが、著者自身が「その人物になりきって書いた」とテレビで言っていたように、それぞれの章では、それぞれの主人公が「自分が正しい」と思い込んでいる様子がリアルに描かれている。

では、誰の考えが正しいのか?第1章から第6章の主役たちは、それぞれどこかねじ曲がっている。誰にも完全に共感することはできない。

普段、自分たちが所属するいろいろなコミュニティも同じかもしれない。自分も含めて、それぞれどこかねじ曲がっていて、それぞれの思いが微妙にすれ違っていて、それでも普通は大きな事件にもならず、皆で何とかうまくっているのだろう。

お勧め度:★★★★☆(4/5)

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この本は僕も大好きです。読み出したら先が気になって、ほぼ一日で読み終わりました。結構周囲の人には勧めています。

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